ATHLETES
日本のSALOMONアスリートは、S/LABシリーズを纏いながらどんなランニングを続けているのだろう。
日本だけでなく世界でも活躍し続けるアスリートたちの言葉を連載シリーズとしてお届けする。

TOMOKAZU IHARA
つなぐこと
井原知一は、日本で最も多くの100マイルを走っているトップランナーだ。100マイルのトレイルランニングを、人生で100回走る挑戦を続けている。
そんな井原は、会社員時代体重が約100kg近くあって、ランニングはしていなかった。けれど、ある日先輩に誘われて陣馬山を走ったことがターニングポイントになったという。
「雷に打たれたような、何かが自分のなかにビビッときた」感じがした。
それからトレイルランに夢中になり、初めてのレース「斑尾高原トレイルランニングレース」を走り、「信越五岳トレイルランニングレース」を何度も走り、米国や日本、香港、インドネシア、シンガポール、フランス、イタリアなどで走ってきた。
「会社員を卒業して走る生活を始め、サロモンアスリートになりました。100マイルを100回走る旅の道中、長らく「S/LAB」を履いてきました。GENESISについては30足以上履いていて、これまでで最も信用できるギアやウェアの一つ、つまりスタメンメンバーとして旅を共にしています。ギアもウェアも、家族や友達も含めて、色々な関係性を大切にしながら走り続けていきたいですね」
そして、今、井原はかつて自分でも想像していなかった場所まで来ることができた——もうあと数年のうちに100マイルを100回完走しようとしているのだ。
「自分はものすごく飛び抜けた存在ではないかもしれない。けれど、一歩一歩歩みを進めるなかでここまで来ることができた。そういう姿を皆に見てもらって、皆がそれによってインスパイアされると良いなと思います。自分はそんなふうに『誰にでも、想像していなかったようなことができるようになる』ということを皆につないでいきたいと思っているんです」

インスピレーション
井原は、これからどう走りたいかと問われてこう答えている。
「これからあと数年で100回目の100マイルを達成すると思いますが、これからはそれに向けてどんどん難しい挑戦をしていきたいですね。距離が長かったり、登り続けるものだったりと、できるかどうかわからないようなものがいいですね」
「難しい」と井原が語るとき、それは何かの壁を自分で乗り越えていくための挑戦、という意味だけではなく、誰かにとってのインスピレーションになるように、という意味が込められている言葉だ。
「例えば僕が挑戦を続けている『バークレー・マラソンズ』のオーガナイザーのラズは、歩いてアメリカを横断するチャレンジをしている。歳を取って、昔のように走れないかもしれない。それでも、『そんな俺にとっての今のチャレンジ(歩くこと)をしている』と言いながらいつだって何かをやろうとする。自分がどんな状態であっても、その時々のテーマで何かをやり遂げようとしている。人間は、いくつになっても自分の方法でチャレンジを続けられる、そんなことをラズの姿から教えてもらった気がしています。
自分もそういうふうに誰かにとってのインスピレーションになるようなランニングをしたいですね。だから、これからのランは慣れ親しみ、ある程度計算して走る事のできる100マイルではなく、自分にとって『難しい』ものになっていくだろうと思っているんです」
自分が走っているけれど、それが誰かのためになる。
ランニングには、そういう不思議な力が宿ることがある。

静かに、深く
「ここに来たのは『Softrock』をやるためです」
毎年7月に、コロラド州シルバートンを拠点に全米でも最も難しいレースのうちの一つと言われる「Hardrock100」が開催される。「Softrock」はそのレースの前に、「Hardrock」のレースコースをみんなが思い思いに走ったり、キャンプしながら巡ったりすることを指す。
井原は、知人たちと「Softrock」のコースを走りながら「静かに、深く」という言葉を使って話した。
「レースでは、前半は抑えて、後半にギアを上げていくのが自分のスタイルです。そうやってレースに集中するんです。それもすごく楽しいですね」
「でも、それを離れてこういった『Softrock』のようなランニングをすると、人生について考えられるようになります。こんな絶景やそこに生きる動物を見たり、道中で会う人たちと話をしたりして、人生を考え『世界』に触れられる気がします」
「GENESIS 2」を履いて、約3000mあるいは4000mを越える高地のトレイルを踏みながら、井原は走ることの楽しみや、挑戦の意味、自分から誰かにつなぐことのできるものについて話し、また山を登っていった。
朝焼けが井原の足元を照らし、コヨーテが近くを通り過ぎていった。井原は山頂で、静かに、深く深呼吸をした。
なぜ走るのか?
井原は、その根源的(GENESIS)な問いの答えに巡りついているようだ。